dykeさん_ソドムの市早わかり3_映画: 高橋洋の『ソドムの市』 | CineBunch


『ソドムの市』

 

高橋洋監督作、「ソドムの市」 についてまともな感想を書くのは諦めた。そもそもあの日自分が観たものが何だったのか、今もって頭の中で整理できていないのだ。そういうわけなので、僕がこの映画について言えるんじゃないかと、ここ数日ぼんやり考えていたことをそのまんま書くことにする。そこに至った例証とか論立ての部分は全部省略するので、まだ見てない人はもちろん、すでに見た人であっても相当わかりにくいと思う。

笑える映画である。あまりにもチープな仕掛けと、野中英次の「課長バカ一代」すら問題にならない凄まじい脱力系ギャグの洪水に浸り、僕は上映中ひたすら笑い転げていた。しかし爆笑してる最中であっても、得体の知れない禍々しい闇の中に引き摺り込まれそうな気分になったのは、恐らくクライマックスのあの血の海のせいだけではない。

「フランケンシュタイン」というホラーの古典があるが、これはご存知の通りあの巨体の怪物の物語であると同時に、それを死体をつぎはぎして作り出した科学者、フランケンシュタイン博士の物語でもある。

僕が「ソドムの市」から感じた恐ろしさとは、巨体の怪物の容貌に現れるそれではなく、墓場から幾つもの死体を盗み出して組み合わせ、雷のエネルギーを使って命を与えようと試みる、フランケンシュタイン博士の側に属する恐ろしさだ。

「女優霊」や「リング」シリーズの脚本家として注目を集め、和製心霊ホラーの中心的人物となった高橋洋は、ここ数年使われていた意味でのホラー作家とはもはや言えないのかもしれないが、なにか違った意味で恐怖の映画監督として転生しようとしている、そんな気がするのだ。


Radio Cambodia
ハンドルネーム dyke
地方在住の会社員

 

 

Radio Cambodia( http://ryuuzo.at.webry.info/200410/article_5.html
より転載